チャームアスリープとは、2003年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
史上初、そして現在もただ1頭の南関東牝馬三冠を達成した競走馬である。
主な勝ち鞍
2006年:南関東牝馬三冠[浦和桜花賞(地方重賞)、東京プリンセス賞(地方重賞)、関東オークス(GII)]
2006年NARサラブレッド3歳最優秀馬、NARグランプリ最優秀牝馬
概要
父*ティンバーカントリー、母ターフアミティエ、母父*ザグレブという血統。
父ティンバーカントリーは現役時代ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル、プリークネスステークスなど重賞4勝。日本で種牡馬入りしてからは芝、ダート、更には障害でも活躍馬を出しオールマイティーに活躍した。史上初めてJRAの芝、ダート、障害でGI馬を出した種牡馬でもあった。
母ターフアミティエは未出走で繁殖入りした。チャームアスリープが初めての産駒となる。
母父*ザグレブは現役時代の1996年にアイリッシュダービーを勝ちキャリア4戦で種牡馬に転じたアイルランド産種牡馬。当初は産駒成績が振るわずアイルランドに買い戻されていったが、その後にコスモサンビーム、コスモバルクがGIを勝利しGI馬の父となっている。母父として活躍した産駒はチャームアスリープ以外にはいない。
2003年3月19日にユキノビジン、ローレルゲレイロ、ディープボンドなどを生産した北海道新冠町の村田牧場で誕生。2歳になったチャームアスリープは南関東船橋競馬に厩舎を構え、かつて無敗で南関東三冠馬となったトーシンブリザードを管理した佐藤賢二調教師に預けられた。
現役時代
2005年7月25日に地元船橋競馬場で行われた「JRA認定新馬戦」で石崎駿騎手を鞍上にデビュー。8頭立て5番人気とさして目立っていたわけではなかったが、最後方から上り最速で差し切る強い競馬を見せ勝利を飾った。2戦目のはやぶさ特別でも上り最速タイで追い込んだがここは先行した1番人気のカミノヤマレンジャと中団からチャームアスリープと同じ上り最速タイの末脚を見せたジャンサークルに5馬身離されてしまい3着に敗れた。11月の重賞初挑戦でもあるローレル賞では前走で敗れたカミノヤマレンジャには先着したものの末脚が不発に終わり7着、12月のストレチア特別、東京2歳優駿牝馬でも夏の頃見せた末脚は見られず、7着、5着に敗れ、2歳時は新馬勝ちのみで終わった。
3歳時は地元船橋の福寿草特別から開始する予定であったが出走取り消しとなってしまい、川崎競馬場の若竹特別から復帰。3着に敗れたものの久々に上り最速の末脚が炸裂し調子が戻ってきたことを伺わせた。次走は南関東牝馬三冠路線への参戦の為ステップレースのユングフラウ賞へ出走。ここでも上り最速で7番人気を覆す4着と好走を見せたが、上位3着までだった優先出走権をクビ差で逃すことになった。陣営は諦めず賞金を稼ぐべくもくれん特別へ出走。ここでは当時南関東でリーディング上位の騎手として活躍していた内田博幸騎手を鞍上に招いた。前走の走りで久しぶりの上位人気となる3番人気に推され、いつも通り上り最速でついに2勝目。次走ライラック特別でも2着と賞金を積み上げ、チャームアスリープと陣営は南関東牝馬三冠の第1戦・浦和桜花賞へ向かった。
桜花賞が行われる浦和競馬場ダート1600mはスタート位置が悪く外枠が非常に不利なことで有名であったが、チャームアスリープは4枠4番とさほど悪くならず、前走までの走りもよかったため混戦模様の中3.6倍の1番人気に支持された。レースでは中団後方から向こう正面でまくり上げ、最終コーナーで先頭を奪うとそのまま1馬身半の着差を付け重賞初勝利。三冠の初戦を制した。今野忠成騎手に乗り替わって雨の不良馬場の中迎えた二冠目の東京プリンセス賞では前走とは違い単勝3.4倍の抜けた1番人気となり、先行していたヨシノアルテミスを上がり2位の末脚でクビ差差し切り重賞2勝目。残すところは1か月後の最後の一冠、関東オークスのみとなった。
鞍上に内田騎手も戻り万全の態勢で三冠達成に挑むチャームアスリープは、迎えた関東オークスで3.8倍の3番人気に支持された。三冠の期待がかかる二冠牝馬が1番人気に支持されなかったのである。それも無理のない話で、三冠目の関東オークスは2000年からダートグレード競走になっていて、中央所属の競走馬が出走できるようになっていたのである。しかもちょうどチャームアスリープが挑戦する2006年にGIIに昇格したばかりであった。1番人気は中央所属で前年に牝馬ながら全日本2歳優駿を勝利したGI馬グレイスティアラ。前走でGII兵庫チャンピオンシップを勝利しての参戦であった。2番人気は鞍上を武豊に乗り替わって出走してきたシェルズレイ[1]。なんと前走は中央競馬の優駿牝馬7着で、ダートはこれが初挑戦であった。当時ディープインパクトなどで大暴れしていた全盛期の武豊が鞍上とは言え、地方所属の競走馬は初ダートの馬に人気で負けるほどだったのである。むしろ3番人気になったことが既にいつもより多くの支持を集めたと言えるだろう。
レース本番では後方集団外につけたグレイスティアラに内から並んでマーク。グレイスティアラは第3コーナーで10番手から最終直線入り口で先頭に立ちそのまま抜け出す王道の競馬。その時は誰しもがグレイスティアラの勝利を確信したが、外の方から1頭チャームアスリープが明らかに他とは違う足色で迫ってきた。チャームアスリープは内田騎手の激に応えてどんどん差を詰め、差し切った所がちょうどゴール板前。3着モンヴェールには3馬身差を付け、史上初となる南関東牝馬三冠を達成した。
夏の休養を経たチャームアスリープの陣営は関東オークスでの走りから中央勢とも言い勝負ができるのではないかと考え、秋初戦を中央競馬の3歳牝馬によるオープン戦紫苑ステークスに決め、内田騎手と共に中山競馬場へ遠征した。南関東から来た三冠牝馬ということで4番人気の支持を受けたが、結果は15頭立ての14着と厚い壁に跳ね返される結果に終わった。
その後チャームアスリープは地元船橋へ戻り体勢を立て直し、3歳シーズンの最終戦として先輩の三冠馬ロジータの名を冠する川崎のロジータ記念へ出走。中央馬がいないここでは単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持され、レース本番でも関東オークスと同じく後方から上り最速40.5秒の末脚で前に迫った。しかし丁度1つ前を走っていたユングフラウ賞除外からコツコツ条件戦を戦ってきた8番人気の伏兵マキノチーフが、なんとチャームアスリープと同じ40.5秒の上り最速タイの末脚を見せ、チャームアスリープは最後まで4分の3馬身差を詰め切れず、2着に敗れることになってしまった。年度末のNARグランプリでは史上初の南関東牝馬三冠制覇を評価されてサラブレッド3歳最優秀馬と最優秀牝馬を受賞。当時のNARグランプリは3歳馬の表彰が牡牝で分かれていなかった為、チャームアスリープは地方競馬の3歳馬全ての競走馬で最も優秀であると判断されたことになる。3歳最優秀馬を牝馬が受賞するのは95年のライデンリーダー以来史上2頭目の快挙だった。
4歳時は地元船橋のGIIIマリーンカップから始動。中央の強豪も出走するダートグレード競走だが、1番人気は同じティンバーカントリーを父に持つ船橋の先輩牝馬トーセンジョウオー。チャームアスリープは内田騎手が前年より主戦を務めるトーセンジョウオーに騎乗するため、今野忠成騎手に乗り替わった。いつも通り後方からレースを進めたが、トーセンジョウオーがクリムゾンルージュとの地方馬ワンツーを決める中末脚が不発となり14頭立て12着と大敗。御神本訓史騎手に乗り替わって挑んだ南関東の重賞しらさぎ賞、大井記念ではどちらも上り2位の末脚を見せたものの、追い込み始めるまでに前との差が広がりすぎ、しかも上り最速で走る相手がいずれも自身の前に居たとあってはどうしようもなく、11頭立て6着、16頭立て8着と苦戦。夏に出走したスパーキングレディーカップでは単勝1.5倍の1番人気メイショウバトラーが6馬身差で圧勝する中道中8番手を追走したもののそこから追い込むどころか11着と、徐々に地方勢のなかでも上位に食い込めなくなっていった。休養を挟んだ後の年末のオープン戦でも8着。4歳時はTCK女王盃、エンプレス杯と交流重賞を2戦したが、8着、9着と前年と同じく精彩を欠き、ここで頭打ちと判断され引退することになった。通算成績21戦5勝、うち重賞3勝。結局三冠を達成してから勝利を挙げることは出来ずに終わった。
引退後
引退後は故郷の村田牧場で繁殖牝馬となった。2009年にキングヘイローとの仔が誕生してから2017年まで8頭の産駒が生まれ、その内6頭が勝ちあがるという優秀な成績を記録していたが、2018年に事故により15歳で亡くなった。その死後デビューした8番仔ブラヴールが2020年の京浜盃を勝利して産駒初の重賞馬となり、現在も船橋競馬の現役競走馬として活躍している。
チャームアスリープは同年代に中央競馬で走っていた三冠馬ディープインパクトや、今もなお川崎競馬場で伝説として語り継がれる牝馬の三冠馬ロジータのように三冠を達成してからも南関東の代表として多くの競走を勝つことは出来ず、古馬となってからは中央から来た強豪や同じ地方で活躍する先輩後輩に追いつけず、あるいは追い抜かれ、最終的に惨敗もしないが上位にも絡めないというポジションで頭打ちとなり引退することになってしまったため、チャームアスリープの南関東牝馬三冠という記録は牡馬も含めた三冠と比べるとなにかと軽い扱いをされてしまいがちである。しかし当然と言えば当然ながら世代戦で活躍することと古馬戦で活躍する才能は本来別物であり、チャームアスリープが才気あふれる素晴らしい牝馬であったことは、関東オークスでグレイスティアラを差し切ったあの最終直線と、20年近く経つ今もチャームアスリープ以外に南関東牝馬三冠を制した牝馬が現れないという事実が、はっきりと物語っている。
血統表
*ティンバーカントリー Timber Country 1992 栗毛 |
Woodman 1983 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
*プレイメイト | Buckpasser | ||
Intriguing | |||
Fall Aspen 1976 栗毛 |
Pretense | Endeavour | |
Imitation | |||
Change Water | Swaps | ||
Portage | |||
ターフアミティエ 1999 鹿毛 FNo.2-s |
*ザグレブ 1993 黒鹿毛 |
Theatrical | Nureyev |
*ツリーオブノレッジ | |||
Sophonisbe | *ウォロー | ||
Southern Seas | |||
*トップニュースII 1984 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer | |
Pas de Nom | |||
Fabulous Fraud | Le Fabuleux | ||
The Bride | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Swaps 5×4(9.38%)、Northern Dancer 5×4(9.38%)
関連コミュニティ
関連リンク
関連項目
南関東三冠馬 | |
南関東限定時代 | ヒカルタカイ(1967年) | ゴールデンリボー(1975年) | ハツシバオー(1978年) | サンオーイ(1983年) | ハナキオー(1986年) | ロジータ(1989年) | トーシンブリザード(2001年) |
---|---|
全国交流時代 | ミックファイア(2023年) |
3歳ダート三冠時代 | 達成馬無し |
南関東牝馬三冠 | チャームアスリープ(2006年) |
競馬テンプレート |
脚注
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