「騸(せん)」の字がJIS第2水準までにないため、カタカナで「セン馬」、ひらがなで「せん馬」とも書かれる。
概要
家畜やペットは、必要以上に子を増やさないように去勢することがある。食肉用の場合は肉質をよくする意味もある。また、雄は去勢することにより、気性が穏やかになる傾向がある。
馬でも乗馬・使役馬は同様に繁殖用に少数を残して去勢することが多い。
一方、競走馬は、繁殖に上がれるかどうかが現役時代の成績に大きく左右されるため、日本では現役中に去勢することは少ない。
それでも、あまりにも気性が荒かったり馬っ気を出したりするような馬は、現役中に去勢する場合がある。
「牡」「牝」の字は牛偏にもかかわらず馬にも使うが、「騸」の字は馬に対してのみ使う。
去勢された牡牛は「閹牛(えんぎゅう)」というが現代日本では希な用法である。
牝馬の去勢は極めて困難であり、まず行われないため特定の用語はない。
日本競馬での騸馬の扱い
騸馬の性別は「牡」「牝」とは区別され、馬柱には「セン」または「セ」と書かれる。
出走条件に「牡・牝」と書かれていた場合、騸馬は出走できない。
いつの時代も、クラシック五冠(桜花賞・皐月賞・日本ダービー・オークス・菊花賞)には出走できない。これらのレースは繁殖用として優秀な個体を見極める意味合いが大きいため、繁殖能力の失われた騸馬に枠を取られては困るのである。
それ以外の重賞については、例えば以下のように変遷している(当然ながら牝馬限定戦は除く)。
- 朝日杯フューチュリティステークス …1991年から2003年までは「牡・騸」。2004年から「牡・牝」に
- 阪神3歳ステークス …1991年に阪神3歳牝馬ステークスになるまでは出走可。現阪神JF
- ホープフルステークス …2014年のG2昇格時から出走不可
- NHKマイルカップ …もとより出走不可
- 天皇賞(春・秋) …2008年から出走可。それまでは不可
- 有馬記念 …もとより出走可
諸外国では、他の家畜のように繁殖用の少数を残して去勢する場合も多い。欧州などでは種牡馬の選定を終えた後の4歳以上の古馬は去勢されてしまうことが多く、GⅠの勝ち鞍のある馬や、凱旋門賞3着馬ですら去勢されることもある。特に馬産の行われない香港ではほとんどが去勢されてしまう。
また、障害競走を走る競走馬は危険性の観点から去勢が行われるのがほとんどである。とはいえ、障害競走の人気が高い欧州では需要があるため、平地の超長距離で実績を残したステイヤーが障害競走専用の種牡馬となる場合が多い。
一方日本では去勢は細々としか行われず、特に家畜を去勢する文化はなかったこともあってか、障害競走も含めて基本的に去勢は行われず、主にあまりにも気性が荒い馬への最終手段として行われる。サウンドトゥルーのように気性は穏やかでも体質改善のために去勢が行われる場合もある。
現役中に騸馬となった主な競走馬
名前太字は去勢後GⅠ級競走を勝った競走馬。()カッコ内は去勢後の主な勝ち鞍。並び順はGⅠ級競走勝ち馬→GⅡ級競走勝ち馬→GⅢ級競走勝ち馬。同格勝ち鞍の場合は去勢後の獲得賞金順。外国馬は国別で順不同。
- サウンドトゥルー(2015東京大賞典(GⅠ)、2016チャンピオンズカップ(GⅠ)、2017JBCクラシック(JpnⅠ)、2015日本テレビ盃(JpnⅡ))
- レガシーワールド(1993ジャパンカップ(GⅠ)、1992セントライト記念(GⅡ))
- マーベラスクラウン(1994ジャパンカップ(GⅠ)、1994金鯱賞(GⅡ)、1994京都大賞典(GⅡ))
- トウカイポイント(2002マイルチャンピオンシップ(GⅠ)、2002中山記念(GⅡ))
- ノンコノユメ(2018フェブラリーステークス(GⅠ)、2018根岸ステークス(GⅢ))
- マグナーテン(2002毎日王冠(GⅡ)、2003アメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)、2001・02関屋記念(GⅢ))
- ホットシークレット(2000・02ステイヤーズステークス(GⅡ)、2001目黒記念(GⅡ))
- コパノキッキング(2019東京盃(JpnⅡ)、2018カペラステークス(GⅢ)、2019根岸ステークス(GⅢ))
- カレンミロティック(2013金鯱賞(GⅡ))
- アフリカンゴールド(2022京都記念(GⅡ))
- アサカディフィート(2004中山金杯(GⅢ)、2007・08小倉大賞典(JpnⅢ))
- メイショウナルト(2013小倉記念(GⅢ)、2014七夕賞(GⅢ))
- ビアンフェ(2021函館スプリントステークス(GⅢ))
- ゴースト(競走馬)(2020西宮ステークス(3勝クラス))
外国馬
- ファーラップ(1930メルボルンカップ、1931コックスプレートなど生涯戦績51戦37勝を記録し、オーストラリアとニュージーランドの両国で競馬殿堂入りしている。)
- ケルソ(1961ホイットニーステークス、1960・61・62・63・64ジョッキークラブゴールドカップなど生涯戦績63戦39勝。5年連続で年度代表馬に選ばれ、アメリカ競馬殿堂入りしている。)
- ジョンヘンリー(2度エクリプス賞年度代表馬に選ばれ、1980・81サンルイレイステークス(GⅠ)などGⅠを16勝と北米最多GⅠ勝利記録を数十年経った今でも保持している。アメリカ競馬殿堂入りも果たした。)
- サイレントウィットネス(デビューから香港GⅠ8つを含む17連勝を挙げ、日本でも2005スプリンターズステークス(GⅠ)を勝利した短距離馬。)
- ゴールデンシックスティ(2020・21香港マイル(GⅠ)など香港GⅠ5つを含む16連勝を達成。)
- テイクオーバーターゲット(豪州GⅠを6勝し、日本でも2006スプリンターズステークス(GⅠ)を勝利した短距離馬。オーストラリア競馬殿堂入り。)
- カラジ(2005・06・07中山グランドジャンプ(JGⅠ)。12歳でのGⅠ優勝はJRA史上最高齢勝利記録である。)
- ファニーサイド(2003年のアメリカ二冠馬。三冠馬も含めて、二冠以上を制したセン馬はファニーサイドのみ。)
引退馬
競走馬を引退した後の牡馬は、種牡馬とならず乗馬などになった場合は去勢される場合が多い。
種牡馬を引退して功労馬として余生を過ごす場合も基本的に去勢されるが、プライベート種牡馬扱いで登録だけは続けている場合や、試情馬(当て馬)を兼ねている場合、引退時の年齢から手術がかえって危険な場合などはその限りではない。
関連動画
※去勢手術そのものの動画もあるがここでは触れない。「セン馬」タグから検索されたし。
関連静画
関連リンク
関連項目
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